木曜にみる夢 〜教室スタッフの休日〜

 

午前10時

 

男は銭湯へ向かう

 

保育園から帰ってきて、家事といえない家事を済ませた男にも

 

塾の経理などの事務がたまっている男にも

 

休息は必要だ

 

 

連休が取れず、なかなか旅に出れない男

 

幼少期、たまの日曜日の夕方

牛乳を飲みながら『魔界村』というゲームを楽しみに

父親と弟と銭湯に通っていた下町育ちの男には

 

大浴場は何よりのご褒美だ

 

 

前世はローマ人なのだろう

 

 

 

 

正午

 

男は机に向かう

 

日曜日には難関試験が待っている

 

受検を無かったことにしたい気持ちを抑え込み、受験料4500円を価値あるものにすべく

 

全身全霊で知識を頭に叩き込む

 

 

現役当時、『一夜漬けの天才』を自認していた男も

 

よる年波には勝てず

 

覚えるためにページをめくるのでなく

参考書もただの読み物になってしまいがちだが

 

不合格通知が届くまでは、そっとしてあげたい

 

 

 

 

14時半

 

男は戦いに出る

 

受験生に

「勝て!勝て!勝てー!」と伝えるためだけに

 

木曜日も教室を開けることにしたのだ

 

前夜、21時の思いつきだ

 

受験生は男の話など聴いていないというのに…

 

 

受験生が必要としているのは

 

彼の小言ではなく

 

隣で勉強している同級生の存在と

 

すずのきの空気

 

そして演習すべき教材のみである

 

 

男の居場所は、せいぜいバランスボールの上だ

 

 

 

 

19時

 

男にも家族がいる

 

食卓を囲まねば、居場所を失う

 

反抗期を迎える前に、子どもの笑顔を刻みつけとかねば

 

人生の面白みを欠いてしまう

 

思い出はたいてい、食事のシーンと共にある

 

 

 

 

22時

 

おそらく就寝だ

 

前夜は眠れずに午前4時に起きている

 

そろそろ受験期

 

毎年のことながら、なれるものではない

 

受験生と家族の想いを、ひとりひとり背負い込んでいる気になっている

 

この仕事の醍醐味の1つではある

 

 

 

 

 

 

いい夢をみているはずだ

おもいえがく すべては現実になる 

 

 

 

 

みなさまも 素晴らしい木曜日を